トライアスロンイン上五島2017

頚椎ヘルニアの手術から1年…このレースが復帰第1戦である。
といっても、ランに不安があったので、3種目ではなくリレー部門のバイク担当での出場となった。
エントリー時に大会会長である浅上先生にお願いして、スイムとランを担当してくれる人を紹介してもらっていたのだ。
もちろん現地で初顔合わせである。

当日の朝、バイクラックでスイム担当の長崎市の稲岡さんとお会いすることができた。
旦那様が以前この大会にも出場していて、ご自身も島原のアクアスロン出場の経験があるとのことだった。

それからしばらくして、ラン担当の地元の山下君ともお会いすることができた。
ハーフマラソンまでの経験があり、このコースでのラン12kmの目安タイムを聞くと、
なんと47分台!良い位置で繋ぐことができれば優勝も狙えそうだ。

9時にスイムスタートを浜辺から見送る。
今年の海は引き潮の遠浅で、歩く距離が長くなっていた。
スイム2kmは約660mを3周回するコースで、1周ごとに砂浜に上がってくるため、順位を確認することができる。
スタートから13分ほど経過した頃、スイム担当の稲岡さんが上がってきた。
声援を送ると元気に答えてくれた。

2周目…スタートから26分ちょっと経過した頃に稲岡さんが上がってきた。ほぼイーブンペースである。
まだまだ元気な様子で、これなら40分くらいでスイムフィニッシュできそうだ。
3周目に入ったのを見送ってから、リレーゾーンに向かった。

スタートから34分ほどでリレー部門トップの選手がスイムフィニッシュして来た。
バイク担当にアンクルバンドを渡して、さあスタート!…のはずが、審判からストップがかかる。
本来、後に着けなければならないゼッケンが前に着いていたのだ。
ゼッケンを着け直して、ようやくトップがバイクスタートした。

そこからしばらくして、2番手で長崎の高柳さん、高木さん、川田さんのチームのスイム担当、高柳さんがスイムフィニッシュしてきた。
おそらく稲岡さんは、時間的にこの次くらいのはずなので、高木さんを追う展開になりそうだ。

予想どおり、スタートから40分足らずで稲岡さんがスイムフィニッシュしてきた。
全体でも15番前後と、かなりの好位置だ。
先ほどまでリラックスムードで待っていたはずだったが、ここにきて急に心拍数が上がるのを感じる。
いよいよ復帰戦のスタートである。

スタートからいきなりの上りが始まる。
全体に緩やかではあるが、スピードを上げて走ると心拍数が一気に上がった。
2kmを過ぎてピークに到達するときにはHR170を超えている。
しかし、アップの時点でもここまで上げていたので問題なくクリアできた。

海岸線に入って、小刻みなアップダウン区間を抜け、米山に至る上りの手前で、リレーの部トップでバイクスタートした選手に追いついた。
それ以前に高木さんが追い抜いているはずである。
できれば早い段階で追いつきたいところだが…そんなことを考える前に、まずは自分の脚である。

実は宿からスイム会場に向かうとき、少し左脚の動きに違和感を感じていた。
ペダリングにスムースさが感じられない…きれいに回転できていない感覚があった。
ダンシングも、ほんの少しだがバランスが悪い。

おそるおそる米山手前の坂を上る。
ダンシングは多用せず、少し軽めのギアで回転を意識した。米山に入ってもその走りは変わらない。
序盤は脚を使わないように、そして久しぶりの米山の傾斜を確かめるように走った。
少し上ると千葉君に追いついた。一声かけて追い抜く。
不思議なもので、誰かを追い抜くと自分の調子が良いかのように感じる。
と、同時に脚自体もほぐれてきたのか、米山のピークが思っていたより早くやって来たように感じた。

米山のピークを越えると、少しアップダウンがある以外は下り基調である。前方の選手を捕らえながらペースを上げていく。
しかし、ここにきて左脚の違和感が出始めた。時々、踏み込んだ際に膝下が軽く震える。
脚全体がガクガクしてペダリングが不規則になってしまうのだ。
幸い下り区間で脚を止めることで治まってはきたが、米山の上りで出たら大幅なペースダウンは免れない。
少しペースを控え気味に2周目に入った。

 2周目に入って序盤の上りをクリアし、海岸線に入る。
捕らえる選手もまばらになった頃、見覚えのある姿が目に入った。
リレーの部でトップを走っている高木さんである。
このままだと米山に入る前に追いつきそうだ。小刻みなアップダウン区間で徐々に差を縮め、少し長めの上り区間で追いついた。
少し抑えていたつもりだったが、無意識にがんばっていたのか、時折脚の震えがやってくる。
ペダリングを乱さないように、よりいっそう回転を意識して走った。

米山の手前の坂に入る前に、少し後の様子を気にしてみる。どうやら高木さんはついて来ていないようだった。
まだ最後の難関である米山が待っている…ペースダウンだけはしないように注意して走った。

無理をしないように走ったせいか、2周目の米山は思ったより楽に感じる。
気を抜くと止まりそうになる勾配の箇所も、比較的スムースに乗り切ることができた。
エイドステーションを過ぎて少し上ると、あとは下り基調…しかもリレーなので、当然ランの心配をしなくても良い。
ここで少しだけ脚に力を込めてみる…と、その瞬間ふくらはぎが攣ってしまった。
バイクの距離は42km…普段の練習からすれば、どうということのない距離でまだまだ余裕があると思っていたが、
久々に味わうレースでの負荷は相当なものだったようだ。

少し回転を緩めて流し気味に走りながら、ふくらはぎの痙攣が治まるのを待つ。
幸いデッドヒートを繰り広げているわけではなかったので、時折脚を止めてみる。
開会式会場の「しおさい」横を抜けて、バイクフィニッシュに向かう港通りの平坦区間を走る頃には痙攣も治まっていた。
奈良尾大橋を渡り切るとバイクフィニッシュだ。
もちろんリレーの部トップでラン担当の山下君にアンクルバンドを渡した。

時間にして1時間35分ほど…3種目で出場した絶好調時には遠く及ばなかったが、
久々のレースを存分に味わうことができたのでとりあえず合格点だ。
山下君は予想どおりの激走でそのままフィニッシュ…リレーの部で優勝となった。

正直なところ、まだ指先の痺れは残っていて、神経反射の亢進からランの走りもぎこちない。
まだまだ完全復活とはいかないが、また走れることの喜びを胸に一歩ずつ前に進んでいこうと思う。

坂口晃一