ひわさうみがめトライアスロン2014

ひわさうみがめトライアスロン2014

長崎西海トライアスロンから一週間後、今年はうまく日程がずれてくれたので、2年ぶりの二週連続参戦となった。長崎西海では例年のような猛暑とはならず、しかも強風の影響でランが短縮されたため、体へのダメージは比較的少ないはずだった。しかし、思わぬ落とし穴が待っていた。

長崎西海でのレース翌日、夕方にかけてやたらとのどが渇いた。おかしいなと思っていると、鼻の奥が少しツンとするような感覚…上咽頭炎をともなう風邪のようだった。症状は軽かったので、かかりつけの耳鼻科に通ったり、ビタミンCを意識してたくさん摂ったりして凌いできた。症状は重くならない代わりに軽くもならない…そんな状態で出発の日を迎えた。

レース前日の土曜日、渋滞を避けるために朝6時に家を出る。途中、淡路島のSAに寄って休憩するが、少し眠気を感じる。運転に支障を及ぼすものではなかったが、明らかに体調が悪い。

10時に日和佐到着、少し体が重い気がするが、今回は2年ぶりの参加となるため、バイクコースの試走に出かけた。天気は曇りで、さほど暑さは感じない。しかし、鼻からのどにかけての違和感が尋常ではなかった。それでも流しながらではあるがバイクコース約40kmを走った。

昼食後に持ってきていた市販の風邪薬を飲んで、会場近くの温泉に入ると意識が朦朧としてきた。うつらうつらとして、気持ち良いやらしんどいやら…複雑な気分だったが、少しすっきりしたので宿へ向かった。

宿に着いてからは、夕食をとったり長崎西海のレースレポートを書いたりして過ごした。夕食後の風邪薬の影響なのか、眠気が襲ってきたので21時過ぎには就寝する。

レース当日の朝、意外と目覚めはすっきりしていた。風邪薬が効いてくれたのだろうか?ともあれ、前日が風邪のピークだったのだと思うようにした。6時半に宿を出て、7時に会場入りする。準備を済ませてアップのため、バイクコースに向かった。

バイクコースは日和佐の市街から河川敷にかけて、少し平地区間を走った後、阿波サンラインに入るといきなり9%の上りが現れる。この坂は途中で10%になり、上りきったところのトンネル入り口がちょうど5km地点だ。アップとして、ここまでを目標に走る。

「もしすごくしんどかったらDNS(出走せず)かも…。」そんな思いで走ったが、幸い前日の試走で感じたような、鼻からのどにかけての違和感はなく、何とかスタートできそうだった。少しほっとして会場に戻る。

トランジットエリアで準備していると、隣は久々に出会うアミューズの丹羽さんだった。また、先週の長崎西海でもご一緒した福岡県の龍頭さんがはるばるやって来ていた。ランでのアップをして戻ってくると、毎年淡路島一周でご一緒する「たらちゃん」こと、太田良さんにも出会った。いつも一緒に参加する愛媛の齋藤君が今年は参加しておらず、一緒に参加するはずだった同じ職場の福森さんが仕事で来れなかった。なので、少しさびしかったのだが、それ以上に多くの人に会うことができて、風邪引きのしんどさを少し忘れることができた気がした。

午前9時に第1ウェーブがスタートする。同時にスタートする人数は、前週の長崎西海では約100名だったが、今回は約190名…ほぼ倍の人数である。しかし、スタートラインが比較的幅広く設定されているので、前週ほどのバトルもなく、早い段階で自分の泳ぐラインが定まっていった。しかも波はほとんどなく、海は驚くほど静かだ。

スイムのコースは、最近では珍しい行って帰るだけの直線コースだ。100mごとに三角のブイが設置されていて、大きく番号が表示されている。なので、自分が今どこまで泳いできたのかがよくわかる。次のブイに到達するまでの体感的な時間は確実に短い…というよりはプールでの感覚に近いといったところだろうか?このままいけば30分は余裕で切れそうだ。風邪で体がつらいことも忘れて次のブイを目指す。

例年、最初どんなに海が静かでも、沖に行けばうねりが出て泳ぎ辛くなってくる。今年はどのあたりからだろうか?そんなことを考えながら泳いでいるうちに中間点の大きなブイが見えてくる。海は相変わらず静かだ。このレースには10回以上出場しているが、こんなに泳ぎやすいのは初めてだった。中間点の大きなブイを回って折り返す。

少しだけペースが落ちたように感じはしたが、泳ぎやすさは変わらない。最後のブイの横を通過して砂浜に上がる。早速時計を確認すると27分ちょうどだった。砂に足をとられながら、少し走って計測ポイントを通過したときは27分19秒だった。

防波堤の切れ目から海岸線沿いの道に入り、少し走って神社の境内に設置されたバイクトランジットエリアに向かう。トランジットエリアは横長に設定されていて、走る距離が結構長い。僕のゼッケン番号は113で、例年ならバイクスタート側の端のほうである。しかし、今年はエリアのほぼ真ん中だった。走る距離は当然ながら、みんな平等になっている。しかし、バイクシューズをしっかり履いてからスタートする者としては、バイクシューズで走る距離が長くなるのは少し辛い。だからといって、バイクシューズをペダルにつけてスタートするのはここ10年くらいやっていない。もちろん練習もしていないので、いつもどおりバイクシューズをしっかり履いてからスタートした。

役場前の通りから厄除橋を渡り、日和佐駅前を通って阿波サンラインへ向かう。風もほとんどなく、抑え気味でも楽に巡航できた。阿波サンラインに入ると、しばらくは本格的な上り区間がはじまる。スイムは無事に済んだが、のどに爆弾を抱えていることには変わりがない。息を上げすぎて咳き込んでしまったら、一気に苦しくなってしまうことは明らかだった。先行する選手を一気に捉えてしまうチャンスだったが、抑え気味に走った。それでも少しづつ、確実に前を走る選手を捉えていく。先週と同じく1枚軽めのギアで上っているせいか、足の負担も抑えられているようだ。

5km地点のトンネルを抜けて、少し勾配が落ち着いた思ったら、また上りになる。このあたりから周りはレベルが同じくらいの選手同士になり、抜きつ抜かれつがはじまる。第1展望台から第2展望台は上り基調で進んでいく。下りで抜かれても上りで追いつき、少しづつ引き離す。抑え気味でもいつもと同じ調子で走ることが出来ているようだ。いや、抑えている分だけ少し足にも余裕がある。

ひわさ2014bika1

第3展望台に差し掛かる頃、福岡県の龍頭さんが追いついてきた。僕と同じく長崎西海からの二週連続となるため、レース前は「ゆっくりいきますよ」とは言っていたものの、やはり調子は良さそうだ。下りの勢いで一気に追い抜かれ、直後の上りでもどんどん離されていってしまう。この調子だと年代別での表彰台も狙えそうである。風邪引きがなくてもついていけないような速さだった。

第3展望台を過ぎると、折り返し手前までの間は「隠れ平地区間」となる。「隠れ」というのは、前後のアップダウンにまぎれて、実は平地であることがわかりにくいからだ。厳密に言えば上り基調になっている部分もあるのだが、思い切ってギアをかけて走ったほうが確実に速い。ここでギアをアウターに入れなおした。

「隠れ平地区間」をしばらく走っていると、オープン参加となっているプロ選手である細田選手がダントツのトップで折り返してきた。そこからしばらくして後続の選手が次々と折り返してくる。例のごとく、現在の順位を確認するために選手の数を数える。トップ10まではまばらだったが、折り返しが近づくにつれて選手の数が多くなっていった。

結局折り返し地点での順位は54番目だった。リレーの選手や第2ウェーブ以降の選手もいるので正確な順位ではないが、目安としては十分だった。例年と比べても同じような順位だ。ここからバイク終了までどこまで順位を上げていくことができるか…。ここまで抑えて走ってきたせいか、足の負担も軽く感じた。往路より復路のほうが少し楽なので、50番以内までは上げることができるかもしれない。そんなことを考えているうちに、風邪引きのことは少し忘れつつあった。

ひわさ2014bike2

折り返し後の長い上りで一人の選手を捉える。しかしそこからなかなか順位を上げることができない。一人抜いてはまた一人抜かれ、同じ人と何度も順位が入れ替わった。

復路の最後にある10%の上りに差し掛かったときに二人捉えたが、そのうち1人にはまた追いつかれた。そのまま下りに入ったところで少しずつ離されていく。ここで次のランのことを考えてふと我に返った。呼吸を整えておくためにもあまり無理はせず、流し気味でバイクフィニッシュに向かう。結局、抜いた数と抜かれた数は同じで、バイク後半では順位を上げることはできなかった。

ランに入ると、のどに抱えた爆弾が突然蠢きはじめる。バイク終了までにはすっかり忘れていたのどの違和感が急に甦ってきた。大きく息を吸うと咳き込んでしまいそうなので、自然と呼吸が浅くなる。まるで酸素が肺まで届いていないかのような感覚だ。そのせいかストライドも伸びない。このまま最後までしっかり走りきれるのだろうか?そんな不安が頭をよぎる。それでも前を走る二人の選手との距離が徐々に縮まっていく。このままペースを保てばそのうち追いつきそうなので、焦る気持ちを抑えながら走った。

しばらく川沿いの道を走り、橋を渡る手前で前の選手二人を捕らえた。一気に突き放すことはできないが、ペースをしっかり保てば自然と距離は離れていく。この頃から少しずつ暑さを感じ始めたので、エイドではしっかり給水し、ビニール袋に入った氷も受け取った。

田んぼの真ん中を通る道を真っ直ぐに走る。日差しはそれほどきつくはなっていなかったが、日陰がまったくないので思った以上に辛い。中学生のボランティアが用水路の水を汲んでかけてくれる。このレースに出たことのある人は誰もが覚えている風景だ。

序盤で2人を抜いてから、しばらく順位に動きはなかったのだが、ここで一人抜かれる。程なく前でペースダウンしている選手を捉えたが、その後すぐに別の選手にも抜かれた。

しばらく走った田んぼの真ん中を抜けると、ほんの少しだが上り基調となる。呼吸はだいぶ整ってきたが、相変わらず浅いままだ。折り返し地点も近づいてきて、ペースを上げたいところだったができないでいた。そんな時、また一人の選手に抜かれる…と、その選手は序盤に抜いたうちの一人だった。少し距離が離れるが、しばらくすると走るスピードはほぼ同じになったようで、距離はあまり変わらない。

折り返しを過ぎて、今度は少しだけだが下り基調となる。今の段階で順位はバイク終了から変わっていない。先ほど抜かれた選手との距離も少しずつ縮まってきていた。何とかこのまま踏ん張れれば…そんな思いで走っていたが、少し足にきはじめる。7km地点を過ぎたあたりで二人の選手に抜かれた。そしてそのうちの一人は序盤に抜いた二人の選手のうち、もう一人の選手だった。残り3kmということでペースを上げているのだろうか…目に見えて距離が離れていく。そして、少しずつ縮まっていたはずの前の選手との距離も開きはじめた。

いつもならこちらもペースアップして後を追うところだが、のどの爆弾がそれを許さない。最低限のペースを落とさないことが精一杯だった。残り2kmを切って、今まで走ってきたコースの復路から外れてフィニッシュ地点に向かう。真っ直ぐ続く道の先に左折する交差点が見えているが、なかなかたどり着かない。

残り1km地点…ここで3人の選手に次々と抜かれる。この地点でこんなに抜かれたのは最近記憶にない。ここまで何とか保ってきた集中力も切れかかっていた。ラストスパートをかけるでもなく、ただひたすらにフィニッシュを目指す。

とにかく早く休みたい…その思いでフィニッシュゲートをくぐる。結果は2時間35分8秒と、2年前より1分半ほど速かったのだが、順位は62位とバイク終了から10も順位を下げてしまうことになってしまった。レースコンディションはこれまでこのレースに参加した中で一番良かった。それにもかかわらず、自分のコンディションが整わなかったため、納得いく結果にならなかったことが悔やまれる。それでも何とか走り切れたことは収穫だったと思いたい。

昨年と同様に、今年も7月でトライアスロンシーズンは終了となってしまった。どこかのレースを探そうかとも思ったが、体調が回復しないうちはそんな気にもなれないだろう。連戦と風邪のダブルパンチで少々グロッキー気味なので、しばらく休んでシーズン後半のマラソンに向けて準備していこうと思う。

坂口晃一